LISMOとiTunesそれぞれの印税収入を算出してみた。

 LISMOiTunesでそれぞれ発生する著作権使用料と、JASRACの手数料と、著作者の印税収入を私なりに調べてみた。

 打倒!”ソフトバンク”iPhone−−ドコモ、auの戦略-Toyokeizai Online

 auの音楽配信サービスであるLISMO対応端末は稼働数1854万台と、幅広いユーザーにお使いいただいている。アイフォーンだと楽曲のダウンロードは無線LAN経由だが、LISMOは3Gのネットワークを使う。場所を選ばずにダウンロードできるし、最新楽曲数で優位性がある。音楽業界はアップルが大好きだが、LISMOも応援してくれている。最近でもサザンオールスターズの歴代楽曲の「着うたフル」を展開しているが、ものすごい人気で、これまで触れたことがない人が来ている。LISMOの課金は1曲420円だが、iTunesでは99セント。音楽の価値が4分の1と評価されているわけだ。権利者の価値を大事にしたいという思いが強いところは、LISMOのビジネスモデルを高く評価してくれるはずだ。


この記事に対する反応 その1 その2

 まあ、色んなところでツッコまれてたけど、実際はどうなんだ?ってことが気になったし、自身の勉強のためにも、ってことで・・・JASRACのHP観たり、HPの内容をJASRAC電凸で確認したり、作曲家の友人に印税収入の明細を調べて貰ったりした。JASRACが絡むと発揮される私の行動力の理由は不明(笑)。
 では早速・・・。
 (注:あくまで私が個人的に調べたモノなんで、目安っつーことで。間違ってたら指摘していただけるとありがたいです。)
 追記:コメントいただきまして、著作権使用料に関しては「着うた」と「着うたフル」の違いが私自身良く分かっていなかったようで、以下で用いてる率含め比較そのものが少し違うのかも知れません。時間をみつけて調べてみようかと思ってますけど…。


一曲あたりの著作権使用料(以後、少数第三位以下は四捨五入しとく)

 なんか配信の条件によって色々と変わってくるらしいんだけど、今回は当然、有料&再生期間に制限が無いものとして計算。

 JASRAC ネットワーク課 HP内 「使用料規定早見表」より
通常のダウンロード(着メロ専用とかストリーミングとかでは無く)・情報料あり・再生期間の制限なし
→一曲一回につき、情報料の7.7%又は7.7円
(最低でも7.7円かかる、すなわち情報料が100円以下の場合はどんなに安くても7.7円ですよ、ってこと)

 このソースをもとにRISMOとiTunes著作権使用料を比べてみると・・・

 LISMO 420×0.077=32.34円
 iTunes 175×0.077=13.48円(175円ていうのは、単純にiTunesの150円と200円の2パターンの平均)

 という結果に・・・って、この時点で、LISMOの方が倍以上著作権使用料が発生していることになるな。
 (つーか、ふと思ったんだけど、この7.7%ってただのゲン担ぎじゃね?まあ、根拠は一応あるんだろうけど・・・)

JASRACに支払われる手数料

 これは、JASRACのHP上ではソースが見つからなかったので、作曲家の友人に電話して印税収入の明細を調べてもらった。で、そこに書かれていた「インタラクティブ配信」の 「JASRAC手数料」ってのを参照した。(つーことで、ここが一番間違ってる可能性が高い)
 で、JASRACの取り分は「11%」とのこと。(CDが確か6%)
 つーことでこんな感じ。

 LISMO 32.34×0.11=3.56円
 iTunes 13.48×0.11=1.48円

 ・・・余談だけど、音楽出版社ごとに発行される明細の内容は違うらしい。さらに作家の所属事務所によってもそこから作家に提示される明細は違うとのこと。彼の所属事務所では作家に渡る明細に対してはなにも手を加えていないんだけど、別の事務所では明細どころか振込金額しか提示されないところもあるらしい。

作曲家と作詞家に支払われる印税

 で、音楽出版社またはレーベルと作曲家と作詞家に支払われる金額は、作家と音楽出版社またはレーベルとの契約内容で異なるんだけど、今回は25%+25%+50%で計算してみる。(大物の作家になるとコレが33%+33%+33%となるらしい、ちなみに私の友人は25%でそれが普通)

 LISMO 音楽出版社またはレーベル:32.34−3.56×0.50=14.39円
     作曲家・作詞家それぞれ:32.34−3.56×0.25=7.20円
 iTunes 音楽出版社またはレーベル:13.48−1.48×0.50=6円
     作曲家・作詞家それぞれ:13.48−1.48×0.25=3円

 まあ、こんなもんか・・・。

まとめ

 つーことで、私が調べた結果によると(原盤権料なんかについては良く分からんかったのでおいといたとして)これだけ観ると約2倍強LISMOが高い。(記事でKDDIの人は「音楽の価値が4分の1」と言っているが、「セント」と「円」比べてる時点でそもそも間違ってるしwww*1今気がついたわ)この差をどう観るか、っていうのは人それぞれだろうけどね。
 で、ひとつ、ここで注意すべきなのが、著作者に支払われる印税は、一曲いくらだろうが最終的にはそれぞれのサービスの売り上げによって違ってくるよ、ってことか(そこまでは私自身調べきれなかったので、他の方に期待しとく)。
 あと、単純に配信する側の一曲あたりの利益も情報料に比例することになるから・・・つまり、LISMOは音楽の価値を4倍(円とセントの違いは置いといて)と評価しているとも言えないことはないんだけど、単純に計算すると一曲あたりの自社の利益をiTunesに比べて4倍(しつこいようだが円とセントの違いは置いといて)得ようとしている、とも言えるわけで(まあその辺は経費の関係もあるんだろうけど)皆さん(私も含めて)のツッコミはある程度的を射ていたってことだな。
 (なんか、結局はただの揚げ足とりになっちゃったな)
 最後に・・・それでも売れてる、ってのは確かにすごいっつーか、音質のこととか考えると私のような人間にとっては悲しいっつーか。ただ売れてる以上は、ある面、良いサービスではあるんだろうな、と。


 話は変わるけど、仮に音楽配信でミリオンを達成すると、(大分大雑把だけど)作家には300万から720万くらいの印税が入る、ってことか?これに他の印税も加わるわけだから、まあ、それなりの収入にはなるな・・・ただし「ミリオン」達成すればだけどね(涙)
 

追記

 なんか、Slashdot Japanにリンク貼ってくれた方がいたみたいで、そこからのアクセスがすごいことになったんですが、とりあえず皆さんアクセスありがとうございます。はてブコメントやそこでのコメントに簡単な返答だけしときます。


 @mohno『着メロ時代は著作権者(JASRAC著作権料)だけだったのが、着うたになって隣接権者(レコード会社)も利益になる構図があって力を入れているのだから原盤権料はおいておけないのでは?』
 今回は、作家に入る印税が知りたかったので、原盤権料はあまり気にしてなかったのですが、確かにおっしゃる通りでもありますね。原盤権料だと音楽出版社もしくはレーベル各社と配信業者との契約になるのかな、と思ったので諦めた次第です。そのうち調べられたら調べたいところです。


 @gnt『まあ「理論的には」そうなんですがね。RIAJの発表なんかと付き合わせてみるといろいろ???ってなりますよね。』
 そうですね。その辺の解りにくさは何とかならないもんですかね・・・私はここまでが限界でした。あと、著作権料に関してはRIAJはノータッチなんでは無かったでしたっけ?例えば、作家事務所に所属している純粋な商業作家だと・・・「著作権料→JASRAC音楽出版社→作家事務所→作家」っていう流れで印税が作家に入るらしいんですが、JASRAC手数料以外に引かれるお金って、作家事務所とのマネジメント契約かなんかの料金くらいだったと・・・。まあ、それも原盤権料まで含めて考えたほうが良かったよ、ってことですかね。その辺も再度勉強してみます。 


 @Slashdot Japanコメント『・・・4倍の単価で権利料も2倍強なら、インフラの(技術的|シェア的)特殊性も考えれば役員発言もそんな騒がれてるほど非難されるほどのものではないと思う。ただ、それは技術者視点で携帯がらみはめんどくせえの知ってるから言える事であって・・・』
 やっぱ、携帯がらみだとそうなるんですかね・・・。heatwave_p2pさんのコメントでも「米国の着うたフルに対応するRingtonesは2ドル半ばから3ドル半ばくらい」ってありましたし・・・。多分皆さんがツッコンでるのは4倍云々よりかは、そこに見え隠れする「何か」なのでしょうけど。


 @Slashdot Japanコメント『計算がJASRAC委託分だけしか計算されてないんじゃ?』
 そういうことでおk。

*1:コメントいただきまして脚注:iTunesの日本での情報料は150・200円なので、99セントと比べるのではなく、そっちと比べないとダメなんじゃね?ってことで。